「自分の今すべきことに専念できる場所」
―フロアマットに机が整然と並んでいて、白い机に緑のクッションの椅子、電子黒板の前に立つのはスーツ姿の白い歯が似合う若手講師。生徒たちはみんな笑顔で手を挙げる。
こんな「THE よくある塾」とは正反対だ。
畳がある。
本棚には古書が並ぶ。
障子の前には座卓。
真ん中には円卓。
二階には、一人で没頭できるデスク。
一見すると雑然としている。だけどそこには「自分」に夢中な塾生と、それを見守り導く「教育者」がいる。それぞれが開いている教科書は別だが、見ているのはみんな「よりよい未来の自分」で、そのために目の前の勉強に集中している点は全員が同じ。
「子どもたちはね、自分が『心地いい』と感じたら、新しい古いという見てくれなんかどうでもよくなるんだよ」
そう語りながらグラスを傾ける彼。
―もちろん、清潔であることは大事だよ
と急いでつけ足すところも「らしさ」が出ている。ここまでイメージが固まっているんだ、あとは物件さえあればすぐにでも開校できる。そう、物件さえあれば。
「意外と、無いもんですね」
と言った僕に、彼が「そうだね」と応じる。全く無いわけではない。ただ、かなり奥まった場所にあったり、契約条件が複雑だったり、狭すぎたり、少し離れすぎていたり。実際に内見に行ってみたけれど、どれもかなり妥協しなければいけないものだった。担当者曰く、そもそも兼六に「事業用」の物件がかなり少ないとのこと。
「今はとにかく、物件があればいつでも動けるようにしておこう」
そうだ。動かしようのない現実に頭を悩ませるより、今できる精いっぱいをやり切ろう。それが自ずと、いい結果をもたらしてくれる。そんな、塾生たちに伝えたいことを、僕らがいの一番に試されている気がした。
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